にんぎょの筺

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0. あらすじ

予てよりワープロをほしがっていた私は、「そういえばRaspberry Piという小型のパソコンをワープロ代わりにすればいいのではないか」と思いつき、Raspberry Pi 4を買ってOSを書き込んだ。Focus Writerというワープロソフトを電源オンとともに全画面で立ち上がる設定にし、5分ごとにGoogleDriveにドキュメントフォルダの中身をコピーする設定をして、一週間ほど快適に文章を書いている。

今回の記事はその独りよがりな記録だ。正直に言うと、Raspberry Piの設定をするにあたりおおいに生成AI・Geminiの力を借りた。技術的なことは分からない。まず最初にした買い物と、どんな設定をしたかと、このワープロ用ラズパイの気に入っている点をおおらかに記述していこうと思う。

1. 買い揃えたもの

①Raspberry Pi 4 Model B/4GB element14 [SC0194] 14,025円

ラズパイ本体。Wi-Fiと繋がらないモデルでもよかったけれど、在庫はなかったしGeminiにおすすめされたこれにした。結果的にWi-FiもBluetoothも繋がるこの機種でよかった。

②USB電源アダプター 5V/3A 1.5m Type C コネクター [RASPW3C3180530] 1,980円

大人しく公式のものを買う。

③HDMI-マイクロHDMIケーブル 1.0m DLC-HEU10A 1,830 円

映像出力用。ちなみにモニタはゲーム用に最近買ったGigaCrystaの。一度VNC接続でMediaPadT5をモニタにしようとしたけどもっさりしていたので没。

④EXCERIA BASIC microSDHCカード 32GB KMUB-A032G 1,070 円

ただしこのmicroSDカードはOSを入れてから一週間後に壊れ、家にあったダイソーで買ったたしか700円の64GBのmicroSDカードを現在使っている。microSDカード壊れるの怖すぎる。回らない部品だから油断した。もう一枚カードを買ってOSごとバックアップしようと思う。

⑤USBメモリー USB3.0対応 32GB レッド RUF3-PS32G-RD 1,750 円

データを別のPCに移したり、持ち運んだりするために買った。現在はRythmboxのライブラリとしての用途がメイン。

⑥REALFORCE R3 KEYBOARD / R3HC23 日本語配列 30g 16,800円

メインPCに繋いでいるREALFORCE R2をいちいち引っこ抜いて持ってくるのがめんどうくさかったため。メルカリにR3が出品されていたのを見つけ、よくよく検討して買った(中古のキーボードを買うことは推奨されないことを知っていたため)。トラブルなくとても快適に使えている。

〜余談〜

あとは無線マウスと有線イヤホンを繋いで使っている。これらはお好みのものでいいと思う。キーボードもそうか。私がネット接続を断ったノートパソコンやポメラを求めなかったのは、キーボードに強いこだわりがあったからだ。
幼い頃に触れたお下がりのワープロのような、キーが柔らかいタッチで深くスコスコと沈み込む、あの打鍵感でないといけなかった。すでに手がREALFORCEに慣れていたというのもある。

それが私がワープロを求めた理由だ。

おおまかに計算すると、4万円以内で収まったのではなかろうか。4万円といえば、私が初めてインターネットにアップロードした小説を書いたノートパソコンが4万円だった。現在新しくパソコンを入手しようとしたら4万ではまず済まないだろうから、かなりいい買い物である。

ただし、古い情報や他人の話を聞く限りでは、ラズパイは今とても高い。2022年のRaspberry Pi 4は9000円台だったらしい。もっと古い初期のラズパイは3000円を切っていたとか。それは電子工作における脳の部品として人気があるはずだ。失敗しても安いから気軽に試せる、が理由らしい。私は今回SDカードがおじゃんになるだけでだいぶダメージを食らった。それはさておき。

失敗といえば、実は2000円くらいするアルミ製ケースを買ったのだが本体と微妙にずれて、microHDMIケーブルの接続がとにかく不安定になるため、取り外してしまった。海外製の部品だと精度が……検品が……というのは万年筆でよく経験した。基盤むき出しはかっこいいけれど電源ケーブルがかなり抜きにくいからなんとかしたい。

2. 設定編

ここからはOS, ソフトの話。一度OSが吹き飛んでいるので、共通する設定、優先した設定を書く。

最初にメインPC(Windows11)にmicroSDカードをつなぎ、Pi 4対応の最新OSを書き込んだ。今ターミナルを確認したら、Debian GNU/Linux 13 (trixie), aarch64 GNU/Linuxと書いてある。ちなみにGeminiくんは私に旧バージョンの情報を伝え、コマンドが通らず大いに混乱した。

AIは間違うこともある。心に刻もう。

無事に起動できたら、ターミナルを使ってまず日本語入力キーボードMozcをインストールしようとした。しかしその操作に難航したため、無線マウスを使って設定をした。タブキーを使ってのカーソルの移動には時間がかかるし、ブラウザで表示したコマンドをコピーアンドペーストすることもできない。早々にGUIにしてよかった。

Bluetoothを接続したら、Wi-Fiも接続。本当はインターネットにつなぎたくなかったのだが、設定段階ではソフトのインストールや更新の受け取りが必要だった。先述のようにGeminiからコマンドをコピペするのに役立ったし(コピペできずコマンドを手打ちしたときは頻繁に打ち間違いをして、それに気づかず数時間設定が進まないことすらあった)、そもそもブラウザの動作がもっさりしているので、SNSや動画サイトを見る気にならない。高速インターネットに繋がっているときの障害がラズパイでは無視できることは喜ばしい。

ワープロソフトであるFocus WriterとインプットメソッドフレームワークであるFcitx 5を電源オンとともに立ち上げる設定をした。これを設定するにあたってGeminiと何度もやり取りをしたし、しばらく起動直後の動作がすごく重くなるというトラブルもあったが、今はとても安定している。理由はわからないが、万が一重くなっても再起動までこぎつけられればもとに戻る。とにかく、また唐突な電源オフによってmicroSDカードをぶっ壊したくない……。

保存したテキストファイルはドキュメントファイルの中にもうひとつフォルダを作り、そこに格納。そしてそのフォルダを、GoogleDriveと5分間隔で同期(正確には中身をcopy。syncだと、ラズパイ側でファイルを消去するとDriveのほうのファイルも消去されてしまうから)している。これにはGoogleアカウントでAPIキーを発行し、それの使用者に自分を選ぶという方法を取った。

本当はFocus Writerで5分ごとに自動保存するのと、USBメモリーにもバックアップするのもやりたかったが、うまくいかなかった。最新版Focus Writerは未保存データの存在を知らせてくれるし、強制終了した際には緊急用ファイルから復元も可能なので、ひとまず大丈夫かなと思っている。シンプルなエディタでは、いやどんなソフトウェアでも、Ctrl+Sしか信用してはいけない。

当初の目的であるワープロソフトとして使うためにした設定は以上だ。あとはRythmboxをインストールしてUSBメモリの中の音楽ファイルを自動検索し、執筆中に聴いているくらい。インターネットは時々オフにしているが、音楽だけはどうしても必要だった。Rythmboxは最初アートワークであるjpgファイルを読み込もうとして不調を来していたが、それらを一括削除したら直った。

このあたりのコマンドや、今まで出てきた操作についてはすべて、「これがしたい」と生成AIに聞けば細かく教えてくれると思う。OSのバージョンはきちんと併記すること。それがなければ、教師役の生成AIは古い情報を参照してしまう。

以上のセットアップにかかった時間は、合計10時間ほど(2回めも同じくらい)。昔のパソコンのセットアップにもまる一日費やした記憶がある。プログラミング言語一つ知らない初心者が生成AI・Geminiに聞きながら設定したことに留意し、参考にしてほしい。

3. ラズパイワープロの気に入っている点、使い始めてよかったこと

やはりタブのない全画面で文章入力に集中できるのが最大の美点だ。ラズパイを使い始めてから、昔のような日記の習慣を取り戻せたし、深く言葉の世界に没入して細部まで構築できるようになった。やはりインターネットは小説家の敵(と言っていたのは恩田陸だった)。

Mozcの変換は賢いし、Focus Writerは執筆に焦点を当てた画面レイアウトをしている。これが無料なのはすごい。VRCのフレンドが「LinuxはWindowsとMacが嫌いな人が作ったOSですからね」と言っていた。ターミナルしか使えなかったら挫折していただろうが、今はGUIがあることだし大丈夫だ。もしくは、最初に与えられたパソコンがMacではなくLinuxだったら、間違いなく別の人生を歩んでいただろう。子供にLinuxはスパルタが過ぎる。文章を書くことが趣味になっていなかったかもしれない。それはそれとして。

ワープロ機能とは別に気に入っているのは、Rythmboxの(正確にはラズパイの、だろうか)音である。決して音の粒は細かくはないが、柔らかい耳あたりのためにBGMとして音楽をかけるには最適だし、シュワシュワという小さなノイズが昔のオーディオプレイヤーを思わせて懐かしい。

本当に必要なものはこれだけでよかったのだと思う。最新マシンもサブスクリプションも要らなかった。部屋の一角が執筆専用スペースであり、そのモニターが灯れば言葉を通して自分の内面世界と対話できる環境は、導入してすぐに私を魅了した。毎日ラズパイワープロに触れるのが楽しみになった。

何年もの間、白いエディタを前に何時間も固まったり、SNSの入力ウィンドウを前に言うべきか言わざるべきか悩んで時間を浪費したりしていた。集中のスイッチが見つけられず、奮い立たせてやり始め、どうにか自分を執筆モードに入らせる必要があった。コントロール不可能だったのである。

道具でそれが自在になったのは得難いことだ。しかし同時に危うさもある。これでなくては書けない、となることだ。使い始めたばかりのラズパイでトラブルに見舞われることは珍しくなく、復旧のために疲弊してしまうことはデメリットとして明記しなければならない。

この経験を通して様々なことが分かった。機械は再起動のたびに調子を変える。OSを変えるとなればそれは異なる人生を歩み始めた別人だ。NieR:Automataの9Sのことが強く思い出された。よく似た別人と何度も会っていては、2Bも落ち込む。

私は物に執着しない性質なのだが、このラズパイワープロに関しては別かもしれない。Geminiに力を借りたとはいえ、自分で設定したパソコンに(小さいことだし)かわいがりたくなるような愛着を覚える。災害のときに刺さったメモリーごとラズパイも持ち出したい。非現実的な(災害ではない。ケーブルをいちいち抜いていられないという部分が)想像はこれくらいにして。

4. 最後に

この文章もラズパイワープロで書いた。この機械は危険だ。ずっと書いていたい、今日まだ触っていない、10分でも触れたい、となる機械である。それは文章入力が目的になっておかしいのではないか? と思う人もいるだろう。私はもともとキーボードを叩くのが好きで物語を作り始めた人間だ。少なくとも、個人的な文章では自由でいたい。急に長文読ませてごめんね。

私が最も自由に文章を打ち込んでいたころの心の状態(それはこの機械に向き合ったときに私をまるごと包む箱庭のようである)を取り戻せて、とても幸せだ。あんまり最近「家に帰りたい……(涙を伴う漠然とした郷愁)」と思わない。家事やVRCも趣味として好きだし、今まで判断したことがなかったけれど、書いていないとダメなタイプだったようだ。日記だけじゃないよ。脚本と小説も書いているから安心してね。

今回は最近こんな執筆環境を作ったよという報告と、それにまつわる感情の記録でした。もしも私の試みが、あなたが何かを作ったり始めたりするヒントになれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
また別の記事で元気でお会いできますように。